ジャカランダ茂る中心都市
港に面した山の斜面に,白い家々が重なるフンシャル。
町の名前は,野生のういきょう山Funchoの甘い香がたち込めていたことに由来する。
町の中心は西のサン・ロウレンソと東のサンチアゴの2つの砦に挟まれた地域で,フンシヤルの散策はそう難しくないが,より簡単な方法は定期観光バスの利用である。
薄紫の花をつけるジャカランダの繁る,町の中心アリアガ通りを遮るように,15世紀末のマヌエル様式のカテドラルが立つ。
ポルトガル本土外の最初のカテドラルで,キリストの騎士団によって建てられた。
トンガリ屋根のアズレージョが印象的である。
通り沿いのワイン・ロッジでは見学とマディラ・ワインの試飲ができる。
ブランデーを加え発酵を途中で止める酒精強化ワインで,加熱という独特の製法で芳香が得られ,ボルトワインをしのぐ人気の食後酒である。またマディラ刺繍の工房では見学と直売店での買い物が楽しめる。
ラヴラドーレス市場では,マグロやタチウオ,野菜や果物といった農・海産物はもとより龍などの工芸品など島の産物が一堂に会している。
花屋の女性たちは華やかな伝統の民族衣装を着け,早朝から賑わいを見せる。市場では,活気に満ちた島の人々の暮らしに触れられる(日曜休み)。
オーキッド,ストラリッジア,アンスリウムなどの花々も島の特産である。
市場前の川沿いの道を上ると,植物園があり,様々な島の植物が見られる。
庭園の美しいキンタ・ダス・クルーゼスはザルコの住んだ館。16〜18世紀の家具,調度品が展示されている博物館になっている。
サンタ・クララ修道院は,ザルコが家族の墓所として建てた15世紀の教会を礎とし,内部は16〜18世紀のアズレージョで飾られライオンの像に支えられたゴシック様式のザルコの墓がある。
司教館を利用した宗教美術館は,島内の教会から集めた宗教画,金・銀細工やターリャ・ドゥラーダ(金泥細工)のコレクションが収められている。とりわけ15,16世紀のポルトガル,フランダース派の素晴らしい絵画は,当時サトウキビの栽培が盛んだったマディラの経済力を反映するもので,砂糖の高価さも物語っている。
サトウキビは,今でもブドウ,バナナと並ぶマディラの主要作物である。
町の西のサンタ・カタリナ公園には,島最古の建物という,1452年ザルコが建てた小さな礼拝堂,コロンブスの像などがあり,入り口にはエンリケ航海王子の像も立っている。
 夕暮れ頃ともなれば,海岸通りとマリーナに面して,マディラワインと採れたての魚介類を並べた屋台風のレストランが開店し,人々の目と胃袋を刺激する。

フンシャル近郊
渓谷を越えて賑わう漁港ヘ
フンシヤルのアトラクションの中心は,船での周遊や多彩なマリンスポーツだが,渓流の鱒釣りをアレンジする代理店もある。
海からいきなり切り立ったマディラ島の風景は,わずかな移動で激しく変化する。
深い谷や垂直に聾える山肌,そこにバナナ,サトウキビ,ブドウ畑,そして家々が点在する。
曲がりくねった山道を縫って定期バスも走っているが,島内の移動はレンタカーが便利で,観光バスの利用も効率的だ。