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ルーマニアのワイン


ルーマニでは全国各地でワインが生産されている。
北部の丘陵地帯では白ワインが、南部や東南部、西部では赤ワインと白ワインが生産されている。
ルーマニアワインは歴史も古く、紀元前からワインの製造が行なわれていた。
中世ヨーロッパの皇帝・国王たちが愛飲していたのも、ルーマニアのモルダビア地方のコトナリの白ワインだった。
19世紀の後半にパリのワイン国際博覧会で高い評価をうけ、パリでルーマニアワインの大ブームが起きたほどになったこともある。
コトナリが白ワインで有名なら、赤ワインならムルファトラーとされる。
ワイン通へのお土産になる。しかし、決して安くはない。
第2次世界大戦後のソ連による社会主義体制下では、ロシア向けの輸出ワインの生産を行っており、安価なワインを大量に造られていた。
ソ連崩壊後、1990年から品質が改善され、往年のワイン生産に乗り出し、良質のワインが造られるようになっている。
現在は、ヨーロッパでも決して安いワインではなくなっており、日本でも幅広い価格で売られている。10年もののヴィンテージワインは3万円以上で販売されている。

ルーマニアワインの生産地基準

ルーマニアのワインに関する法律の改正により、これまで、D.O.C.(原産地統制名称ワイン)、V.D.O.C.(原産地統制名称上室指定ワイン)、I.G.(地理的表示ワイン)、Vin de Masa(テーブルワイン)に分かれていたがルーマニアワインの品質分類は2007年のEUの
加盟により、EUの基準に従うのだが、さらにルーマニアではEUより厳しい法律になって表示を義務付けている。

品質分類

新たな法律により、以下の3階層になった。
DOC=Denumire de Origine Controlata (保護原産地呼称)33生産地域
ルーマニアワイン制度中で最も厳しい基準。EUの原産地名称保護(Protected Designation of Origin、略称PDO)に相当する。
生産地域、ぶどう品種、ぶどう品種の純度、最低アルコール度数、収穫期のぶどうの糖度、1ヘクタール当たりの最大収穫量、栽培法、剪定法、醸造法、熟成法などが規制されている。
生産地、ぶどう畑の場所まで明確になり、ぶどうの種類、ぶどうの品質、ワインの生産方法やワインの熟成方法を読み取ることができる。また、最高の品質のワインであることが分かる。

IG=indicatie Geografica(保護地理的表示)12生産地域
インディカツィエ・ジェオグラーフィカ(IG)は、「DOC」と同様に、ルーマニアの農業製品に対して与えられる認証であり、定められた地域の原産品の生産地域、ぶどう品種、ぶどう品種の純度、最低アルコール度数、収穫期のぶどうの糖度、1ha当たりの最大収穫量、栽培法、剪定法、醸造法、熟成法などの規制を目的とする。欧州連合の原産地名称保護(Protected Geographical Indication、略称PGI)に相当する。
また、これらを表示することによって、テーブルワイン以上の高い品質のワインであることが分かる。

地理的表示のないワイン

ぶどうの収穫に関する表示法

1、CMD=ぶどうは完熟期に収穫。
2、CT=完熟期より遅めに収穫されたぶどう。
3、CTB=貴腐菌発生後に収穫されたぶどう。

ワインの糖分に関する表示方法

1、辛口ワイン Vin sec(糖度は 0 〜3.99 g/ℓ)
2、中辛口ワイン Vin demisec(糖度は 4 ~ 11.99 g/ℓ)
3、中甘口ワイン Vin demidulce(糖度は 12 ~ 44.99 g/ℓ)
4、甘口ワイン Vin dulce(糖度は 45g/ℓ以上)

ワインの糖分に関する表示方法

1、辛口ワイン Vin sec(糖度は 0 〜3.99 g/ℓ)
2、中辛口ワイン Vin demisec(糖度は 4 ~ 11.99 g/ℓ)
3、中甘口ワイン Vin demidulce(糖度は 12 ~ 44.99 g/ℓ)
4、甘口ワイン Vin dulce(糖度は 45 g/ℓ以上)

熟成に関する表示方法

1、レゼルヴァ Rezerva
オーク樽熟成は6ヶ月間以上で、瓶内熟成も6ヶ月間以上熟成

2、ヴィン・デ・ヴィノテーカ Vin de vinoteca
オーク樽熟成は1年間以上で、瓶内熟成は4年間以上熟成

3、ヴィン・タナル Vin Tanar
生産された年に販売される若いワイン。「ヌーヴォー」と呼ばれるワインに相当する。

ルーマニアの州地図

主なルーマニアワイン産地

モルダビア地方 Moldavia

ルーマニア全土の3分の1のワイン生産量を誇る.
ルーマニアの歴史を感じさせる「ヴィンテージワイン」の産地と評されている。

(主なワイナリー)
コトナリ Cotnari
ルーマニアの北東部、モルダヴィア地方の北西部にある。
モルダビア・ワインで白ワインの中ではヨーロッパでも評価が非常に高いワインだ。
Grasa de Cotonariはルーマニア・ワインの王様と言われリほど。
この地域は甘口の白ワインの生産に理想的な環境で、 石灰岩の土壌と暖かい気候によりブドウの糖度を高めている。 また、貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)の発生があり、 11月の中頃まで可能な遅摘みにより一層の甘口ワインができる。

ヤシ Iasi
7つの丘の街といわれる古都
Bucium ワイナリーのブドウ畑は、町の端から端まで延々と連なる。
代表的ワイン:
Riesling
White Feteasca
Aligote
Muscat Ottonel(発泡性)

パンチュー Panciu
数十年前、ハンターが偶然見つけた長さ2kmにもおよぶ中世のワイン倉庫。
ステファン・セルマーレ大公が統治する時代から秘蔵されてきた。
ぶどう種は「White Feteasca」「Royal Feteasca」「Italian Riesling」。
パンチューのぶどう畑で作られる「Black Babeasca」など、

フシ Husi
プルート河に沿った4つの丘に囲まれている。
フシはかつて貴族の領地で、今でもThe Viovode’s Balcony として保存されている。
フシのワインでビッグ2と称されるものはロゼワインのBusuioaca de Bohotin (ブスイオアカ・デ・ボホティン)と白ワインのZghihara de Husi(ジハラ・デ・フシ)です。

ワラキア地方 Walachia

プイエトロアセーレからドナウ川河口のヴァンジュ・マーレやディアル・ビイラーのワイナリーまで、ワイン畑は延々10万ヘクタールにもおよぶ。
長さ60kmにわたるディアルマーレ地方は、各種ワインの見本市といえる
「ウルラティ」「バレア・カルガレアスカ」そしてト「ハニ」などが有名で、ルーマニア一番の赤ワインの産地として知られ、ルーマニア観光省はこの一帯を「ワインロード」として世界に広報している。

ドラガサーニ Dragasani
ルーマニア南西部オルテニア地方の献上ワインの産地として知られていた。19世紀以来ヨーロッパのさまざまなワイン・コンテストで輝かしい成績を収めている。
ぶどう品種の「Tulburelul de Dagasani」は現在でも、白ワイン・赤ワインどちらにもヨーロッパ市場で広く受け入れられている。
一方、「ソーベニオン・ドラガサニ」は、ゆっくりと時間をかけて、語りかけながら飲むワインと評されている。

トハーニ Tohani
トハーニの領主「ニコラエ王子」と美人だが平民に過ぎなかった「ドーレット」との恋物語は「トハーニ」の名を一躍有名にした。
貴族の称号を捨ててまで、ドーレットとの結婚に走ったニコラエ王子のラブ・ストーリーは2つの世界大戦のはざまという時代背景にもあおられて世間の耳目を集めたが、その王子の名を冠したワインが今でも「Princely」として残っており、原種「ビュジオアカ・デ・トハイ」「ピノノアール・キャバネ・スーベニオン」そしていわずと知れた「ブラック・フェィティアスカ」種から生産されている。また、時代に翻弄されながらも愛を貫いたヒロイン「ドーレット」の名前を拝したワインも「ブラック・フェティアスカ」「メルロー」 「ネグル・デ・トハニ」「イタリアン・リースリング」「スーベニオン・ブランコ」「マスカット・オトネル」などから生産されている。

ウルラティ Urlati
「悲劇のゴールド・プリンス」と称された領主、「コンスタンティン・ブランコビアーヌ」が所有していたワイナリー。
ぶどう種は「キャバネ・スベニオン」と「ピノノール」、それに「メルロー」。
白ワインのぶどう種として代表格といえる「ブラック・フィティアスカ」がある。 「ブラック・フィティアスカ」はブラックベリーの風味を持ち、アルコール度数は12~12.5度だが、グラスにそそいだ瞬間そのまろやかな香りを堪能できる。
オーク樽の中で、時の流れにまかせて熟成すればするほど、料理やロースト・ピーナツと抜群の相性を醸し出す一品。

ヴァリア・カルガリラスカ Valea Calgarerasca
デアル・マーレのワイン畑は、いくつもの谷をまたいだ山間にある。その土地に住む修道僧たちが丹精込めて、ぶどうの収穫とワイン作りにはげみ、いつしか、ワインの里「バレア・カルガリアスカ」と呼ばれるようになった。
ぶどう品種は、「カバネー・スーベニオン」であり、その味はドシっとした重厚さが漂う。カバネー本来の強みに、ねばりを加えたワインと仕上がり。

デアル・マーレ Dealu Mare
カルパチア山脈のいくつもの谷をまたいだ山間にある。南から南東に位置した緩やかな傾その土地に住む修道僧たちが丹精込めて、ぶどうの収穫とワイン作りにはげみ、いつしか、ワインの里「バレア・カルガリアスカ」と呼ばれるようになった。
斜面の丘に15,000ha程のブドウ畑が広がる。
この地域では、日中の気温差が激しく、 柔らかい口当たりの赤ワインが生産されている。ブドウの栽培地としては理想的な環境で、 生産品種はピノ・ノアール、カベルネ・ソーヴィニョン、メルローなど。

レカス Recas
ティミショアラからは目と鼻の先にあるレカス・ワインは通称「川に挟まれた村」にある。
ティミショアラからは目と鼻の先にあるレカス・ワインは通称「川に挟まれた村」にある。ぶどう種は「カバネ・スーベニオン」「ブーグンド・マレ」「メルロー」「カドシャ(イタリアン・リースリング)」「ローヤル・フィティアスカ」そして「クリアタ」など。黄色い「クリアタ」などは、ワイン通でも、ほとんどの人が聞いたことも無いほどだ。
この地独自の品種で、大きくて硬い実が、ややドライな感じがする食卓ワインへと変貌する。

トランシルバニア地方 Transylvania

芳香があり口当たりが軽いワインが、サクソン系の影響を多大に受けたトランシルバニア人たちがつくるワインの特徴である。
ワインのほかに果実からブランデーを作る。
主に梅、りんご、梨などを木樽につけて熟成する、「ビナルス」「パリンカ」「ホリンカ」「ラチー」などがある。

ミニス Minis
トランシルバニアワインと比肩されるアラド産のワイン。
「リポバ」と「パンコタ」にまたがるザラン山脈は50kmもある。
その代表するワイン畑がミニス。
赤ワインのぶどう種としては、「カベルネソーヴィニオン」「メルロー」「ピノノアール」の他に、この地方で生まれた品種「Cadarca」が使われている。

ジドベイ Jidvei
タルナベーレ水系は秋口に霧に悩まされる事が多いが、この霧がぶどうに芳醇さと適度の酸味をつけさせてくれる。このあたりが「香りに包まれたブドウ畑」と呼ばれるところだ。「Jidvei」「Craciunelul de Jos」「Blaj」「Medias, Danes」などの畑がある。

アルバ・ルリア Alba Lulia
中世の城砦都市を思わせるアルバ・ルリア。
ここでは1968年に偶然発見されたギャラリーの地下がなんとワインの理想的な貯蔵庫となっていた。
ワイナリーの中でも有名なのは、Ighiu、Cricau、Sard、Galda、Bucerdea Vinoasa、Santimbru and Telna.など。

トゥルナバ Turnava
トランシルバニア地方のカルパチア山脈に囲まれた高原に位置する。 涼しい気候のため、糖度は低く、フルーティーで主に白ワインを生産している。

バナト Banat
トランシルバニア地方の南西部バナト地方は19世紀初頭から生産され始めた。
当時のウイーン公国に大変重宝された歴史がある。特異な地形から生まれる「バナトワイン」は、多くの特徴を持つ。スイスのチロル地方を思わせる、標高の高い高原地帯にワイン畑が広がるかと思えば、テレミアマーレやトムナティックのように、砂礫質の土地も見られる。とりわけバナト山脈にいたる平原と、丘陵地の間隙を縫って広がるワイン畑として有名なのが「Silagiu-Buziau」である。

黒海沿岸ドブルージャ地方 Dobrudja

古代ギリシャの船乗りたちによって開拓された黒海と、ドナウ・デルタに挟まれた地方は肥沃な土地に恵まれ、ディオニサスのギリシャ神話にも出てくる。
中でも有名なのが「ムルファトラー」の赤ワインである。

ムルファトラー Murfatlar
コトナリが白ワインで有名なら、赤ワインなら特にムルファトラーとされる。
ドブルージャ地方の有名ワイン畑はムルファトラーに集まっている。
黒海からちょうど数キロの位置にあり、年間の日照時間が長く気候も安定している。
石灰質の平野で赤・白のワインを造っている。 近年では赤ワインの評価が以前に増して上昇しつつある地域だ。












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