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イギリスの料理・レストラン・飲食材

イギリスの料理

他のヨーロッパ諸国と比べると今ひとつ特色の薄いイギリス料理だが、最近ではイタリアンやフレンチの影響を受け洗練された「モダン・ブリティシュ」が台頭してきている。
とはいえ、ここでは伝統的な料理を改めて説明しておこう。

ローストビーフ Roast Beef
牛肉をオーブンで焼いたもの。肉汁のソースがかけられる。ヨークシャー・プディング(パイ生地のシュークリームの皮のようなもの。ソースを付けて食べる)が添えられるのが定番。
なお、スコットランドのアバディーンで生産されるアンガス種はヨーロッパでもトップクラスの肉牛。

ステーキ&キドニーパイ Steak and Kidney Pie
牛のステーキと腎臓を煮込んだシチューにパイ皮をかぶせたもの。パブのランチでよく出される。

フィッシュ&チップス Fish and Chips
タラ(codあるいはhaddock)など白身の魚のフライにポテトフライを付け合わせたもの。
塩やビネガーをかけて食べる。いかにもシンプルな料理だが、最も手軽なイギリス料理の定番。ファーストフードのメニューにもあるし、スタンドで新聞紙に包まれて出されることもある。レストランでも出すところがあり、おいしいと評判の店もある。

ドーバー・ソール Dover Sole
ドーバー海峡で採れるヒラメ。グリルまたはムニエルにして食べる。かなり値は張る。

サーモンのソテー
鮭はイギリスで最もポピュラーな魚のひとつで、広く食べられている。

英国風カニコロッケ
イギリス南部海岸地方の名物。

シェファード・パイ
ひき肉と玉ねぎ、マッシュポテトにバター、チーズをかけてオーブンで焼いたパイ。

ランカシャー・ホット・ポット
羊肉と玉ねぎ、ジャガイモを重ねて蒸し焼きしたもの。

マリガタウニー・スープ
イギリスの田舎のカレー味スープ。

スコットランド料理

スコットランド料理で最も有名なのは、ハギス Haggis だろう。
羊のクズ肉や内臓のミンチとオート麦、香辛料を羊の胃袋に詰めて蒸したもの。
クセのある材料だけに好き嫌いは分かれる。イングランド人は毛嫌いしているとか。しかし、スコットランド人にとっては愛すべき伝統料理だ。スコットランドを代表する詩人ロバート・バーンズの誕生日1月25日に「バーンズ・ナイト」というセレモニーが各所で行われる。キルトをはいた男性がバグパイプを演奏し、それに合わせてハギスが登場。みんなの前でナイフを入れ、バーンズの「ハギスに捧げる詩」を朗読しながら取り分ける。
1月25日以外でも国際交流イベントなどで行われたりする。

イギリス独特の食事の習慣

イングリシュ・ブレックファスト
ヨーロッパの大陸側が基本的にパンとコーヒーだけの「コンチネンタル・ブレックファスト」であるのに対し、イギリスの朝食はボリューム満点。フルーツジュースに始まり、コーンフレーク、卵料理、ソーセージまたはベーコン、ポテト、ビーンズなどが用意され自分の好みでたっぷりと食べる。
地方により多少内容は変わるが、イングランドだけではなくイギリス国内ではこのように朝食のボリュームが多い。

アフタヌーン・ティー/ハイ・ティー
アフタヌーン・ティーは19世紀の貴族の婦人の習慣から始まったらしい。紅茶は3杯分くらい入るポットで出され、それにスコーンやサンドイッチなどの軽食が供される。ホテルや市内のティールームで楽しめる。だいたい午後3時から5時半くらいが目安。6時くらいからのコールドミートの入ったサンドイッチを含むボリュームのあるティータイムはハイ・ティーと呼ばれる。

飲み物

パブ

イギリスにおいて酒を飲ませる店というのは約千年くらい昔からあった。宿屋であったり、レストランであったり、人が集まる場所で酒は出されていた。しかし、現在のような形態になり、パブという名称が文献に出てくるようになったのは19世紀になってからである。以降、パブには酒を飲み交わすために人が集まり、コミュニティとしての役割を果たしてきた。
パブの構造は独特のものがあり、かつては労働者と中産階級の飲むスペースが分けられていて、入り口も別にあった。前者は簡素で掃除のしやすい造りになっており、仕事着姿で気楽に入れる雰囲気だし、逆に後者にはゆったりとしたサルーンまたはラウンジが設けられていた。街なかのパブでは分かりづらいが、郊外の一軒家のパブでは、その構造の名残りをとどめているところがある。その意味でも郊外の「カントリーパブ」は一度訪れてみたいものだ。

パブはイギリス国内で約7万軒あると言われているが、現在ではビール会社の系列店の割合が急速に増えており、全体の70〜80%を占める。他に大手のパブチェーン店もあり、純粋な個人経営の店は都市部ではほとんどお目にかかれない状態だ。

都市部では「うまいビールを出す店」として賑わっているパブもあるし、著名人が通った店や、様々な伝説を持つパブも残っている。ロンドンでは市内のウォーキングツアーの締めに名物パブを訪れることも多い。どこも特徴のある看板を街頭に掲げている。
また、そんなパブで出されるイギリスの伝統的な製法で作られたビールもまたウンチクの絡むもので、酒店や飲食店などアルコールに関わる業界の人には興味深いところが多くあるようだ。社員旅行でイギリスを訪れ、楽しい研修に励まれるケースもしばしばある。

エール

日本で一般的に飲まれているビールはラガーのピルスナータイプだ。イギリスではそれとは違ったタイプのビールがあり、その伝統的なビールの総称が「エール」である。さらに分類するとペールエールとブラウンエールなどがあるが、その中で樽詰めで出荷されパブで飲まれるものを「ビター」と呼ぶ。色が濃くホップが効いていてコクがある。昨今の地ビールばやりで日本でもエールタイプを飲む機会が出てきているが、なかなか本場のような環境を作ることは難しい。

パブのカウンターの内側には「ビア・エンジン」とか「ビア・ポンプ」と呼ばれる長い把手がある。井戸のポンプのような仕組みで別室のセラーにあるビール樽に繋がっている。
炭酸が強くないので、このような方式が取られているわけだ。
また、このようなエールは「カスク・コンディションCask Condition」(樽内熟成)と呼ばれる独特の熟成過程が取られる。工場からパブへは樽(カスク)で納められるが、その中に入っているビールはまだ熟成半ば。酵母、糖(酵母の栄養分)、チョウザメの浮き袋を原料とするアイシングラスという清浄材(酵母の沈澱を促進する)、さらにホップも直接、樽の中に入れてしまう。1週間から10日後の「飲み頃」を見計らって、熟練したセラーマンがカウンターのポンプと繋ぐのである。

しかし、イギリスでもキレのあるラガータイプのシェアが伸びてきて、すでにエールを凌ぐようになっている。ハイネケンやカールスバーグなど外国ブランドの進出も顕著である。また、「リアル・エール」の取扱いの手間を省くため、フィルターでろ過して殺菌処理をし、樽詰めするケースも多くなっている。この方式だと酵母も取り除かれているので、これ以上熟成は進まない。また、ガスが混入されるので、圧力でカウンターの注ぎ口まで上り、クリーミーな泡も立つ。要は日本でもっぱら見られるスタイルである。これらは「ケグ・ビア」と呼ばれているが、エールファンはケグ・ビアを「死んだ無菌ビール」と酷評している。

その一方で、エールへの愛着も根強く、上記のような伝統的な製法で作られたエールを「リアル・エール」と呼んで差別化し、保護していこうといく動きもある。CAMRA(Campaign for real Ale)は1971年に発足した「樽出しビールを保存する会 Society For The Preservation of Beers from the Wood」を前身とした組織で、会員は約6万人。リアル・エールの製法の維持を呼び掛け、結果的に小規模醸造所の救済にも貢献している。もちろんビール好きの集まりであり、いろいろなイベントを展開している。8月上旬にはロンドンで数百種類のエールを揃うビール祭りを開催する。
CAMRA のホームページ:http://www.camra.org.uk/(英語)

スコッチ・ウイスキー

スコッチ・ウイスキーの特徴
ウイスキーの代表格と言えるのがスコッチ・ウイスキー。日本のウイスキーももっぱらスコッチ・ウイスキーを手本にしているとされる。ベースとなるのは大麦の麦芽から作られるモルト・ウイスキーと、とうもろこしなどを主原料として作られるのグレーン・ウイスキー。そして、複数のモルト原酒にグレーン原酒を加えてマイルドに仕上げた「ブレンデッド・ウイスキー」である。シーバスリーガルやジョニーウォーカー、バランタインといったお馴染みの銘柄がそれである。

スコットランドでは麦芽を乾燥させる際にピートで焚き付けてスモーキーなフレーバーをつけるのが特徴。ピートとはスコットランドの原野に多く見られる植物、ヒースが土中に堆積してできた泥炭で、地中に層となっているのを掘り出して燃料にする。
熟成にはシェリー樽やバーボン樽などを用いて香りをつける。熟成期間は定義としては最低3年であるが、10年あるいは12年あたりがよく出回っている。中には30年といったものもあり、そうなると値段も相当に張る。

生産地は大きく分けてハイランド、ローランド、アイラ、キャンベルタウンに分類される。
ハイランドはさらに区分され、その中でもスペイ川流域(スペイサイド)に蒸留所が集中している。マッカランなどがこの地域の蒸留所で作られている。
また、アイラ(アイレイ)島産のモルトは特に個性的で、ピートのフレーバーが強いうえに、「潮の香り」がするのが特徴といわれている。
サントリー(ボウモアなど)やニッカなど日本の酒造メーカーもスコットランド内の蒸溜所を所有している。

アイリッシュ・ウイスキー

お隣りのアイルランドでもウイスキーが造られていて、こちらも古い伝統がある。互いに「最古のウイスキー」の座を譲ろうとしないが、アイリッシュ・ウイスキーの方が歴史的にスコッチよりも古いという説が有力だ。しかし、市場では他のウイスキーに遅れをとり、現在では蒸溜所は3か所しかなく、劣勢の感は否めない。巻き返しを考えてか、アイリッシュは普通はモルトの製造過程でピートは使わないのだが、現在は使用するケースも多くなっている。
ちなみにスコッチとアイリッシュでは、「ウイスキー」のスペルが違う。アイリッシュが“whiskey”と綴るのに対して、スコッチは“whisky”と e が抜けている。
それでは、バーボン、カナディアン、日本はどちらか? 酒屋を覗いてチェックしてみるとよい。

蒸溜所の個性が出るシングルモルト

グレーン原酒を加えずに、単一の蒸留所のモルト・ウイスキーだけを瓶詰めしたものもあり、これを「シングルモルト・ウイスキー」と呼ぶ。マッカランやグレンフィデックなどがよく知られている。蒸留所によって製法に特徴があるため、シングルモルト・ウイスキーの味わいは、個性豊かなものとなる。つまり、ワインと同様にテイスティングの楽しみがあるといえる。
また、瓶詰め会社が醸造所から原酒を買い付けて、独自で熟成・瓶詰めをして販売しているものもある(ボトラーズ・ブランド)ので、日本では輸入されていないシングルモルトを現地で手に入れることもできる。
そういった醸造所巡りやレア物探しの旅もまた面白いものである。
醸造所ではビジターセンターを設けて工場見学などを受け付けているところがある。












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